働く場所や働き方が多様化する中で、「転居を伴う転勤」が、人材マネジメントにおける重要な論点となっています。転勤は、企業のビジネス展開や従業員のキャリア形成のほか、個人のライフプランや生活スタイルにも大きな影響を与えます。
パーソル総合研究所の調査では、基本給の3割以上の手当があっても「転勤を受け入れない」と答えた人が4割とのことです。
それでは、今後の転勤制度について、考えなくてはならないことは何でしょうか。
■転勤の目的
まず、「転勤の目的とは何か」です。通常、企業における転勤は、企業が新たな市場に進出したり、部門間の連携を図ったりするための手段として利用されます。また、従業員にとっては、異なる地域や部門での経験を通じてスキルや知識を磨く機会ともなります。本来の目的からすると、会社・従業員双方にとって有意義な制度であると言えます。
■転勤の負の側面
しかし一方で、転勤は個人の生活に影響を与えることも事実です。家族やパートナーの就業状況、子どもの学校や友人関係、地域での生活基盤など、転勤には様々な悩みや課題が伴います。特に、共働き夫婦や子育て世代などは、生活様式に応じた柔軟な対応が求められます。
また、転勤が受け入れられない理由の一つとして、時代の変化があります。終身雇用という昔ながらの慣習の終わり、生産年齢人口の減少、つまり労働者の売り手市場となることで、企業の人材統率力の低下が背景にあります。
■今後の転勤制度のあるべき姿
このような状況下で、企業は転勤制度をどのように整備すべきかが問われます。まずは、従業員への情報提供と透明性が重要です。転勤可能性や条件、サポート制度などについて十分な説明をすることで、従業員が納得した上で判断を行うことができます。
転勤の前提条件や対象者の基準を明確化することも大切です。転勤対象者の選定には様々な要因が絡み合いますが、「経営判断だから」のみで終わらせず、公正かつ透明なプロセスを確立することで、従業員の納得感を維持することが不可欠です。
また、実際に転勤となった際のサポート体制も欠かせません。住居探しや子育て支援、配偶者のキャリア支援など、転勤を円滑に実現するための各種制度・対応策を整備することが求められます。また、転勤先での研修や新たな組織・地域にいち早く馴染むための支援プログラムも重要です。
■まとめ
転勤制度は、企業と従業員双方の視点での検討が必要です。
企業はビジネス展開や人材育成の観点から転勤を行う一方で、従業員のライフプランや生活環境を考慮し、適切なサポートを提供することが求められます。透明性と従業員への情報提供、公正性とサポート体制の充実を通じて、転勤を円滑かつ効果的に実施するための取り組みが重要です。
人材配置の仕組みは企業の人材マネジメントにおいて非常に重要なポイントとなります。会社と従業員が同じ方向に進めるよう、まずは仕組みの整備を考えるべきだと考えます。
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